オリジナル寓話

第2話:「ミミの不安と、心の灯りの話」 〜ふく翁の記憶書庫(寓話)〜

jinsei-shippitsu

【1】朝露の道で

朝の森。
ミミはひとり、しずくの落ちる草のそばで耳をしゅんと下げていた。

ミミ
ミミ

だ、大丈夫かな…
みんなの足を引っぱっちゃったら…

今日は、先日の嵐で壊れた橋をみんなで協力して直す日だ。

そこへホップが元気よく跳ねてきた。

ホップ
ホップ

ミミ!橋を直すって話、聞いた!?
ぼく、もうワクワクしてるよ!

ミミはさらに縮こまる。

ムアが近くの木にもたれながら言った。

ムア
ムア

ホップうるさいよ。余計不安になるだろ。
木の上から聞いてたけどよ、ミミ、お前は気にしすぎだ。
“自分のせいで周りに迷惑かける”の呪文はやめろ。

ミミは震える声を出した。

ミミ
ミミ

だ、だって…わたし不器用だし…
何か壊したら…

そこへ、ふく翁がゆっくり現れた。
古書を胸に抱え、朝の光を受けて羽をふわりと揺らしながら。

フクオウ
フクオウ

ほっほ、ミミや。
 “怖い”という気持ちは、悪いものではないのじゃよ。

【2】ミミの不安と涙


ふく翁がそっとミミの隣に座る。

フクオウ
フクオウ

不安はの、“心が動いておる証拠”じゃ。
優しい者ほど、よく揺れる。

ミミは目を丸くした。

ミミ
ミミ

……わ、わたしが弱いんじゃなくて…?

ムアが腕を組んだまま言う。

ムア
ムア

弱さがあるやつのほうが、
 周りをよく見てたりするもんだ。

ホップは大きくうなずいた。

ホップ
ホップ

そうだよミミ!
 ミミがいると、なんかみんな安心するんだもん!

ミミは胸に手を当てた。

「……そんなこと…言ってもらえたのは初めて…」

気持ちが溢れて涙となった。

【3】フクオウの魔法

ふく翁はミミの涙をそっと羽ペンで受け止めた。
その一滴が、光の粒となって浮かびあがる。

フクオウ
フクオウ

この涙はの、
“やさしさ”と“恐れ”の混ざった宝石じゃ。
どちらも、消してしまう必要はない。

光の粒は小さな灯りとなり、ミミの胸にふわりと戻っていく。

ホップが驚いた。

ホップ
ホップ

わぁ…すごい…!
ミミの涙、光ってるよ!

ムアは静かにうなずく。

「……なるほどね。
 “揺れる心”が、灯りになるってわけか。」

【4】ミミの決意

ミミはそっと立ち上がった。

「こ、怖いけど……
 みんなと一緒なら……行ってみたい。」

ホップがぱっと笑う。

ホップ
ホップ

よっしゃー!
 一緒に橋、直しに行こう!

ムアは肩をすくめながらも、口元がゆるむ。

「無理すんなよ。
 でもまあ……決意は悪くない。」

ふく翁がゆっくり頷く。

フクオウ
フクオウ

ほっほ、よいのう。
 “怖さ”を抱えたまま進むのが、本当の勇気じゃ。

【5】ミミの胸に生まれた光

4人はそろって森の奥へ歩き出した。
ミミの胸の灯りは、小さく温かく、道をほんのり照らしていた。

「みんな……ありがとう。
 わたし……少しだけ、強くなれた気がする。」

ふく翁は穏やかに笑った。

「ほっほ。
 さて、行くとするかのう。」

ホップ 「ミミ、泣いたっていいんだよー!」
ムア  「おい、からかうなホップ」
ミミ  「や、やめてよもう…!」

森にまた、小さな笑い声が広がっていった。

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