第30話:レオと、当然の助けと孤独 〜『オリジナル寓話〜
【前置き:この物語について】
この物語は、世界各地の寓話や民話に共通して見られる
「守られている側が、その守りを当然と思うようになる」
という構造を参考にした、オリジナル寓話です。
治安がいいこと。
争いが起きないこと。
弱い者が生き延びられること。
それらは、いつのまにか
“空気のように当たり前”になっていきます。
その当たり前を、
誰が背負っているのかを――
忘れられたときの物語です。
【1】静かすぎる森
レオは屋敷の外の森を少し遠出して歩いていた。
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今日も森は平和だなー
争いは起きず、道は整い、
小さな動物たちは安心して歩いている。
それが、この森の“普通”だ。
誰も口には出さないが、
森の秩序は、グラン家によって守られている。
他に恐れられるほどの、圧倒的な力で。
だが――
その事実を、
誰も改めて考えることはなかった。
【2】物陰の声
森の裏道で、
レオは立ち止まった。
聞こえたのは、
押し殺した声だった。
「やめてよ……」
木の影で、
小さな動物が囲まれていた。
からかい半分のいじめ。
力の差を楽しむ、よくある光景。
レオ:「……いじめか。くだらない。」
レオは、迷わなかった。
【3】助けは、当然の義務
レオ:「おい、やめろ」
レオは鋭い目で睨みつけ、威嚇する。
グラン家が富も力も強いことは森の誰もが知っている。
いじめていた子たちは、
顔色を変え、何も言わずに散っていった。
いつものことだ。
グラン家の名を見れば、逆らう者はいない。
レオは、
助けた小さな動物に目を向けた。
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大丈夫か?
だが――
返ってきたのは、感謝ではなかった。
【4】突き刺さる言葉
「……もっと早く来いよ」
小さな動物は、
服についた土を払いながら言った。
「グラン家だろ?
守るのが仕事なんじゃないのか」
その声に怒りはなく、
自分が助けられるのは当然だという顔。
レオは、言葉を失った。
【5】折れかける心
レオは、その場を後にし森を歩く。
先ほどのことを考えると胸の奥が、
じわりと重くなる。
レオ:「俺は守ったよな……。なんであんなこと言われるんだ。」
レオは間違いなく、弱きを守った。
しかし――
それは助けた相手にとっては、
評価される行為ではなかった。
治安がいいのは当たり前。
強者が弱者を守るのは当たり前。
守られるのは当たり前。
力を持つ者の役割が、
レオには、冷たい形で見えた。
レオは考える。
「でも……
俺がやらなきゃ、誰がやる?」
【6】思考を深く
レオは帰りの森で考え続けた。
「親父もじいちゃんもやってきたことだ。俺は先祖を誇りに思ってる。
でも……
なんでみんな守られるのが当たり前だと思ってるんだ?
守られなくなったらどうするんだ?
俺が攻撃側に回ったら……」
小さいレオは思考を深くしていく。
誰かが褒めてくれるわけでもない。
誰かが理解してくれるわけでもない。
それは――
王になる前の獅子が初めて知った、
力の責任と孤独だった。


ほっほ。
おぬしの人生も聞かせてくれんか?

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