インド寓話

第14話:ホップと、森の青い影 〜『青いジャッカル』〜

jinsei-shippitsu

【前置き:『青いジャッカル』とは?】

この物語は、インド古典「パンチャタントラ(五巻書)」(紀元前200年〜紀元後300年ごろ成立:諸説あり)に収められた寓話、
『青いジャッカル』を参考にしております。

「パンチャタントラ」は、王子たちに知恵と処世術を教えるために書かれた
世界最古級の動物寓話集です。

寓話『青いジャッカル』は、
“偶然まとう力”を、“本物の自分の力”と勘違いしてしまった者の行く末を、
鋭いインド寓話特有の皮肉で描いたお話です。

『青いジャッカル』――「偶然の力」と「本物の力」の勘違い
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【1】森に落ちた「青い影」

昼下がりの森。
ホップは鼻をひくひくさせながら、ムアに言った。

ホップ
ホップ

すごい技を見つけたんだ!
みんなに“尊敬される方法”だよ!

ムアは冷静に眉を上げた。

ムア
ムア

また何か思いついたのか、ホップや。
そんな簡単に“尊敬”は手に入らないと思うぞ。

ミミは心配そうに耳をぺたんとした。

ミミ
ミミ

ほ、ホップ…
わたしもムアの言う通りだと思うよ…?

ホップが今日見つけたのは、
大雨でできた“青い水たまり”。

そこに映る自分の姿が、
まるで別の生き物のように見えたのだ。

ホップ
ホップ

この水溜まりに飛び込んで、全身青くなれば
みんなと違う「もっとすごい自分」になれるよ!

目立ってみんな“尊敬”してくれる!

その時だった。

木の枝でランプを掲げたふく翁が、
ほっほ、と静かに降りてきた。

【2】ふく翁、「青いジャッカル」を語る

ふく翁はホップの顔を見ると、
まるで“昔の知り合いを見つけた”ように目を細めた。

フクオウ
フクオウ

ホップや…
その目は、何かを“盛ろうとしておる”目じゃのぉ。

ちょうどよい。
今日はインドの古い本に載っておる、
『青いジャッカル』を話そうか。

そしてふく翁は、本をゆっくり開いた。


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『青いジャッカル』

ある夜、一匹のジャッカルが、別の群れのジャッカルに追われて、
森から町の中へ逃げこみました。
逃げているうちに染物屋の家へ飛び込み、
誤って 藍(あい)染めの壺 の中へ落ちてしまいました。

ジャッカルは頭から足先まで真っ青になりました。

森に戻ると他の動物たちは皆、この奇妙な色の獣を恐れ、
「これは神の使いかもしれない」とひれ伏しました。

ジャッカルは得意になり、
皆の上に立って命令を出すようになりました。

青いジャッカル:「さぁ、どんどんご馳走をもってこい」

青いジャッカルはすっかり王様気分でした。

しかしある日、遠くで仲間のジャッカルが“遠吠え”すると、
青いジャッカルは思わず同じように吠えてしまいました。

動物たちはその声を聞いて気づきました。

「こいつは神の使いなんかじゃない!ただのジャッカルだ!」

そして皆は怒り、
青いジャッカルは仲間を騙した罰として森を追われてしまいました。

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【3】ホップに残った、青い影

読み終えると、ふく翁は静かに言った。

フクオウ
フクオウ

ホップや。
水溜まりの“青い色”は、雨が止めば流れ落ちる。
しかし自分で積み上げる“本物の色”は、流れんのじゃ。

ホップはしばらく黙っていた。

やがて、自分の映った“青い水たまり”を見て、小さくつぶやいた。

ホップ
ホップ

…ぼく、本当はすごくなくても、
ホップのままでいたい。

ふく翁はほっほ、と笑った。

フクオウ
フクオウ

それが一番の答えじゃよ。
そして、人の役に立つうちに“尊敬”は自然と集まるものじゃ。

ふく翁−フクオウ−
ふく翁−フクオウ−
〜百歳以上の森の賢者〜
Profile
長年さまざまな動物たちの“人生の話”を聞き、本として残してきた語り部。 物語や人生には語り継ぐべき教訓があると信じている。 信念を同じくする “伝記作家” と出会い、 いまは一緒に「世界中の誰もが自分の歴史を残せるようにする」という取り組みを進めている。
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