第26話:ホップと、素直な気持ちと謙虚 〜『ライオンとねずみ』〜
【前置き:『ライオンとねずみ』とは?】
この物語は、古代ギリシャの寓話作家イソップによる
有名な寓話『ライオンとねずみ』 を参考にしています。
力も名声もあるライオンと、力の小さなねずみ。
小さな存在が、自分にできることを引き受ける勇気が、
やがて大きな困難を救う――
【1】森を支える、グラン財閥
森の中心部には、
ライオン家が代々受け継いできた
大きな財閥の館があった。
水、食料、流通、森の守り。
森の暮らしは、その多くが
この財閥の仕組みや治安維持に支えられている。
【2】ホップ、やらかす
その館の庭先で、
ホップが、落ち着きなく走り回っていた。
好奇心が強すぎて、
「行くな」と言われた場所ほど、行ってみたくなる少年だ。
その日、ホップは完全にやらかしていた。

おっきい館だなー。
入って見てみよう!!
ホップは中がどうなっているか気になってしょうがない。
中に入ると大きい噴水や豪華なバラの庭にホップは驚く。
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す、すごいや……
ホップが驚いていると後ろから、

おい。ここは立ち入り禁止だぞ!
振り向くと、
黄金色のたてがみを整えたライオンの少年が立っていた。
【3】グラン・レオという存在
グラン・レオ。
グラン財閥の一人息子。ホップと同い年の十歳だ。
腕を組み、少し鼻にかかった声で言う。
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君どこから入ったの?ここのルールって知ってる?ここは立ち入り禁止なんだよ。
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ご、ごめん……
大きいお屋敷だったからつい夢中でさ……
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ふん。危ないとか思わないわけ?
君を警備員に突き出して捕まえることだって……

すごいね!きみこんな大きなお屋敷に住んでるの!?
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……まあね。
【4】素直な気持ち
「……今日は機嫌がいいから」
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見逃してあげるよ。
完全に上から目線のレオに、
ホップはニカっと笑った。

え!ありがとう!!
レオいい奴だね!
レオは、少しだけ面食らった。
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……
(なんだこいつ……)
【5】困るレオ
数日後。
レオは一人唸っていた。
財閥が森の家族向けに作った小さな公園をみんなに使ってもらうことだ。
勉強のために父からレオに与えられた宿題だ。
資金を投入し、設備を作った。
それなのに、誰も使わない。
レオ:「……なんでだ」
レオは誰にも相談できずにいた。
【6】好奇心が、生んだアイデア
レオが公園を見に行くと聞き覚えのある声がした。

ヒャッホー!
ホップは公園の遊具で遊んでいた。
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お前このあいだの!ここは家族限定の公園だぞ!

え、でも誰も使ってないじゃん。
公園にはホップ以外誰もきていない。
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……。
レオはボソっとつい本音が漏れる。
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もっとみんなに使って欲しいのに……。
ホップは聞き逃さない。

え!もっとみんなに来てほしいの??
レオは弱音を聞かれたことが恥ずかしそうだが、否定はしない。

じゃあさ、
ここのルール、こうしたらもっと使いやすくならない?
レオは眉をひそめながら話を聞く。
- 家族全員限定だとで時間が合わないので来れない
- 小動物の親は子供が危ない遊具で遊ぶのが怖い
- 遊具はすごい楽しいので子供達だけでも安全に遊べるようにする

だからね、
いきなり家族限定じゃなくて、
“子供たちに遊んでもらって”その後に家族で来てもらえばどうかな!

まずは子供たちみんなに楽しんでもらうんだよ!
そしたら家帰ってお母さんとかに話すし!
現場の声を初めて聞いた。
【7】レオの判断
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小さく試すくらいなら、やってみるか。
金はある。
ホップのアイデアと、レオの投資。
二つが合わさり、新しい公園をみんなに使ってもらうプロジェクトが動き出した。
【8】謙虚さという、返し方
小さいが、新しい遊具がある公園は、子供たちをワクワクさせた。
子供たち:「お母さん!近所に新しい公園ができたんだよ!新しい遊具もあってすっごい楽しいの!今度みんなで行こよ!」
といった感じで、少しずつ、確実に広がっていく。
レオとホップは公園を見にいった。
子供たちに囲まれているふく翁の姿がある。

ほっほ。
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ふく翁のじいさん、来てたのか。

まあのう。
みんなが仲良くなれるいい公園じゃのう、レオ。
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ありがとよ、じいさん。
……まあ、ホップのおかげだよ。
そう言われたとき、
ホップは首を振った。

違うよ。レオが最初に屋敷で見逃してくれたから。
レオがぼくの話を聞いてくれたからだよ!
レオは、照れくさそうに笑った。
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……
二人は、目を合わせて笑った。
まだ芽生えたばかりの繋がりが、そこにあった。

ほっほ。
恩は巡るものじゃのう。


ほっほ。
おぬしの人生も聞かせてくれんか?
※以下は、イソップ寓話 に収められている
『ライオンとねずみ』の寓話を著者による意訳(現代語訳)です。
原典のストーリー構造を保持したうえで、読みやすく再構成しています。
『ライオンとねずみ』
ある日、
ライオンが森の中で眠っていた。
その鼻先を、
一匹のねずみが、ちょろちょろと走り回った。
目を覚ましたライオンは、
ねずみを前足で押さえつけ、言った。
「この小さなねずみめ。
今すぐ食べてしまおうか。」
ねずみは震えながら、
必死に言った。
「どうか、命だけはお助けください。
いつか、きっとお役に立ちますから。」
ライオンは、その言葉を聞いて笑った。
「おまえのような小さなものが、
この私の役に立つとでもいうのか。」
そう言いながらも、
ライオンはねずみを放してやった。
それからしばらくして。
ライオンは、狩人が仕掛けた網にかかり、
身動きが取れなくなってしまった。
どんなに力を込めても、
網はびくともしない。
ライオンは大声で吠えた。
その声を聞きつけて、
あのねずみがやって来た。
ねずみは、
何も言わずに網にかじりつき、
少しずつ、糸を噛み切っていった。
やがて、
ライオンは自由になった。
ライオンは言った。
「私は、
小さな者の力を侮っていた。
おまえは、命の恩人だ。」
ねずみは答えた。
「いいえ。
あなたが、あの日、
私を見逃してくださったおかげです。」

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