イソップ寓話

第11話:ホップと、叫んでも誰も来なかった日 〜『オオカミ少年』〜

jinsei-shippitsu

【前置き:オオカミ少年とは?】
この物語は、イソップ寓話の『オオカミ少年』を参考にしております。

『オオカミ少年』は“繰り返される嘘は何をもたらすか”という普遍的なテーマを持つお話しです。

『オオカミ少年』(ページ下部へ)

【1】森の高台で

その朝、ホップはとにかく退屈していた。
退屈すぎて、とにかく木の枝の上を飛び回っている。

ホップ
ホップ

ミミー!ムアー!
ねえねえ、暇だよ!なんかしようよ!

ミミは水色のワンピースの裾を押さえながら、
静かに草むらの花を摘んでいた。

ミミ
ミミ

も、もうちょっと静かにしたら…?
お花たち、びっくりしてるよ…?

ムアはというと、木陰で古い巻物を読んでいる。

ムア
ムア

おいホップ、
朝からそんなに騒がないでくれ。

ホップはムアの言葉が聞こえていない。
そのしっぽは“面白いこと探し”のアンテナのように、
ぴょんぴょんと揺れていた。

【2】“叫ぶとみんなが来る” 遊び

退屈に負けたホップは、急に思いついたように叫んだ。

ホップ
ホップ

うわああああ!!
オオカミだあああ!!!!

バサバサッ。
近くの木の枝からふく翁が驚いて飛び上がった。

ミミもムアも慌てて走ってくる。

フクオウ
フクオウ

ホップや、何事じゃ!?

ホップはケラケラ笑って言った。

ホップ
ホップ

へへへ、うそ!
みんな来るかなって思ってさ!

ミミはぴょこんと耳を落として呟いた。

ミミ
ミミ

もぉ…びっくりしたよぉ…

ムアは尻尾を払いながら、むすっと言った。

ムア
ムア

はぁ…。くだらん。

最初は笑って受け流されていたが、
ホップはその日、三回、五回、七回…
何度も同じことをやった。

【3】本当に危ない状況が来た日

夕方近く、森の風が急に冷たくなり始めた頃。

ホップはどんぐりを集めていたが、
見慣れない獣の影が木々の間を横切った。

—— ガサ…ガサ…

ホップのしっぽがピンと立つ。

ホップ
ホップ

え…?
だ、誰か…!

影が近づく。
ホップは本気で怖くなり叫んだ。

ホップ
ホップ

ミミーー!ムアーー!
ふく翁じいちゃーーん!!
た、助けてーーー!!

だが、森は静かだった。

誰も来ない。
笑い声も、足音も。

冷たい風だけが、小道を吹き抜けた。

ホップの胸がぎゅっと苦しくなる。

ホップ
ホップ

(…やだよ…本当に怖いんだよ…)

【4】救ってくれたのは、たったひとり

そのとき——
頭上から、静かな羽音が聞こえた。

ヒュウウ…

ふく翁がランプを下げ、そっと降りてきた。

フクオウ
フクオウ

ホップや。
今度の叫びは、本物じゃったな。

ホップはふく翁にしがみつき、涙をこぼした。

ホップ
ホップ

ご、ごめんよぉ…
だって…だって、本当に怖かったんだ…

ふく翁は羽でホップの背中を包みながら、
ゆっくりと語った。

フクオウ
フクオウ

ほっほ。
ホップや、みんなに信じてもらうのは大変なんじゃよ。
信頼を削るのは簡単なんじゃ。
しかし、積み直すのは本当にたいへんなものなのじゃ。

じゃがの、
お主が涙を流すほど“本気の声”を出せば、
それはまた届くものじゃよ。

ホップは涙で濡れた目をこすりながら頷いた。

【5】次の日、ホップがしたこと

翌朝。
ホップはミミとムアのところへ行き、
深く頭を下げた。

ホップ
ホップ

昨日はごめん。
もう、嘘の叫びはしないよ。

ミミはほっと笑い、
ムアも肩をすくめて許した。

ふく翁は少し離れた枝の上で、
静かに微笑んでいた。

フクオウ
フクオウ

ほっほ、よい経験をしたのう…。
昨日のお主の“本物の叫び声”は、よう届いておったぞ。
わしだけにじゃがのぉ。

ホップは赤い上着を握りしめ、
心の中でそっと呟いた。

—— もう、人を困らせる叫びはしない。
  本当に話したいとき、届かなくなるから。

ふく翁−フクオウ−
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〜百歳以上の森の賢者〜
Profile
長年さまざまな動物たちの“人生の話”を聞き、本として残してきた語り部。 物語や人生には語り継ぐべき教訓があると信じている。 信念を同じくする “伝記作家” と出会い、 いまは一緒に「世界中の誰もが自分の歴史を残せるようにする」という取り組みを進めている。
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『オオカミと少年』〜イソップ寓話〜

ある村の近くで、
一人の少年が羊の群れを見張っていた。

少年は退屈し、
ふと村の人々を驚かせてみたくなった。

そこで彼は大きな声で叫んだ。

「オオカミだ! オオカミが羊を襲うぞ!」

村人たちは慌てて畑や家から飛び出し、
道具を手にして少年のもとへ駆けつけた。

だがそこにオオカミはいなかった。

少年はただ面白がって笑っているだけだった。

村人たちはあきれ、
文句を言いながら戻っていった。

しばらくして、
少年はまた同じ悪ふざけをした。

「オオカミが来た! 本当に来たんだ!」

村人たちは再び駆けつけたが、
やはりオオカミはいなかった。

少年は笑い転げた。
村人たちは怒り、もう相手にしないと決めた。

——そしてある日。

本当にオオカミが現れ、
羊の群れに襲いかかった。

少年は必死に叫んだ。

「助けて! 本当にオオカミだ!!」

しかし、
村人たちは誰ひとりとして動かなかった。

「どうせまた嘘だろう」
そう思ったからだ。

少年の叫び声は空しく響き、
オオカミは羊を引き裂いて去っていった。

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