第10話:ミミと、不安の心 〜『こぶとり爺さん』〜
【前置き:こぶとり爺さんとは?】
この物語は、日本昔話の『こぶとり爺さん』を参考にしております。
『こぶとり爺さん』は日本昔話で、顔に大きなこぶを持つ二人のお爺さんが登場するお話しです。
【1】雨のほら穴で
その日の森は、しとしとと静かな雨だった。
ミミは濡れた耳を押さえながら、小さくつぶやいた。
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だ、大丈夫かな…
このまま濡れちゃったら…
ホップは枝をくぐりながら元気よく叫ぶ。

ミミ!ほら、木のほら穴があるよ!
ここで雨宿りしようよ!
ムアは眉をひそめ、ほら穴の奥を覗き込んだ。

ほんとうに大丈夫か?
奥に…何かいるぞ。
薄暗いほら穴の中から、かすかな光と、小さな音が聞こえた。
【2】夜だけ踊る、森の精たち
雨音が弱まると同時に、
ほら穴の奥で数匹の、小さな光の“森の精”たちが現れた。
丸い目をした精が、光る木の実を落として慌てている。
ミミは思わず駆け寄り、その実をそっと拾って渡した。
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こ、これ…落としましたよ…?
精はぱぁっと顔を輝かせる。
「ありがとう!優しい子だね!」
そして精たちは輪になり踊りはじめ、
気づけばミミも手をひかれて輪の中へ。
ミミはおそるおそる足を動かしたが、踊っているうちに楽しくなってきた。
踊りはぎこちないが、楽しそうなミミを見て、精たちもとても楽しくなりました。
【3】前向きな心を預ける
踊りの後、リーダーの精がミミの前に浮かんだ。
「また夜に来ておくれ。
その印に——これを少し預かっておくよ。」
精はミミのほっぺに触れた。
すると、ミミの“心の不安”がふっと抜け、
代わりに小さく光る“前向きな心”が残った。
ミミは驚きつつも、どこか心が軽くなるのを感じた。
【4】翌朝、明るくなったミミ
朝の森を歩きながら、ホップが目を丸くした。

ミミ!なんか今日すごく嬉しそうじゃん!
ミミは照れたように微笑む。
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なんだか、胸のあたりが軽いの…!
ムアは腕を組み、少し嫉妬しながらに問いかけた。

なぜミミだけだ?
何をしたんだ、ミミ。
ミミはほっぺに小さく触れ、言葉に詰まる。
ムアの目に、欲のような光がよぎった。
【5】ムア、ほら穴へ
その夜、ムアは1人で昨日のほら穴へ向かった。
いきなりほら穴にきたムアに精たちは驚いた。
精たちはムアを試そうと踊る前に、わざと木の実を落として見せる。
だが——。
ムアはそれを拾わず、舌打ちした。
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こんな実…どうでもいい。
さあ、ぼくにも“印”をくれ。
精たちは一斉に静まり返る。
リーダー精が浮かび上がり、
ムアの胸にそっと手を触れた。
「また来ておくれ。
その“迷いのしるし”、預けておくよ。」
ムアの胸が、ずしりと重くなった。
【6】ふく翁の結び
翌朝。
ムアは苦い顔で戻ってきた。
ふく翁はランプを磨きながら、
三人を見て、静かにほほ笑んだ。

ほっほ。
心の素直さは、自らに光を呼び戻す。
欲に曇れば、迷いは増すものじゃよ。
ミミはほっぺの光をそっと触れ、
ムアは悔しさと向き合いながら、小さくうなずいた。
——森の奥で、心の形がそっと変わった夜だった。

『こぶとり爺さん』〜日本昔話し〜
昔、ある村に頬に大きなこぶを持つお爺さん二人いました。
一人は心のやさしいお爺さん。
もう一人はいじわるなあんまり優しくないお爺さん。
優しいお爺さんはいつもニコニコ。
いじわるなお爺さんはいつもムカムカ。
ある日、ニコニコお爺さんは山へ柴刈りに行き、雨に降られて木の洞(ほら)で雨宿りをします。
夜になると、そこに鬼たちがどんちゃん騒ぎで踊りに来る。
お爺さんは怖がりながらも、楽しそうなのでつい自分も踊りに混ざってしまい、これが意外と鬼たちに大ウケ。鬼たちはお爺さんの踊りを気に入り、
「明日も来い。その代わり、お前のこぶを預かっておこう!」
と言って、なんとお爺さんの顔のこぶをポンッと取ってしまいました。
翌日、家に帰ると、こぶはキレイになくなっていました。
一方それを見た、
いじわるお爺さんは、羨ましくてたまりません。
「わしも鬼たちにこぶを取ってもらおう!」
と同じ場所へ行って同じように鬼の前で踊りました。
「ほら、踊ってやったぞ!早くわしのこぶをとれ!」
心の中でそんなことを思いながら踊っています。
踊っている姿も楽しそうではありませんでした。
心根が悪く、踊りも楽しくないので、
「おもしろくない!昨日のように踊れ!」
と怒られ、
なんと 反対側の頬にもう一つこぶを付けられてしまいました。

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