第21話:ミミと、川辺の小鳥 〜『川で泣いていた小鳥』〜
【前置き:『川で泣いていた小鳥』とは?】
このお話は、東南アジアに伝わる寓話の“構造(型)”
『川で泣いていた小鳥』 を参考にしています。
小さな存在が“不安や恐れ”から川辺で泣き、
周りはその涙を「弱さ」と軽く扱ってしまいます。
しかしその涙の裏には、誰よりも早く自然の変化に気づく“感受性” が隠されており、
最終的には森を救う大切な兆しとなる――
【1】川辺のざわめき
森の朝。
澄んだ川のほとりで、一羽の小鳥が羽をふるわせていた。
鳴くでもなく、飛ぶでもなく、ただ震えて立っている。
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どうしたんだろう?
ホップが近づくが、小鳥は首をすくめるだけ。
ムアは鼻を鳴らす。

泣いてるわけじゃない。気にしすぎだろう。
ミミは優しく丁寧に小鳥に声をかける。
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……大丈夫? なにか、怖いの?
小鳥はかすかに震えながら囁いた。
小鳥:「川の音が……昨日と違うの。深くて、冷たくて……怖いの。」
ミミの喉がつまる。
小鳥のその恐れは、ミミ自身にも伝染してくる。
でもミミは後ずさらない。
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……上流に行って、確かめよう。一緒に。
【2】恐れを抱えて歩く
川上へ進むにつれ、小鳥の震えは増していく。
恐れはミミに伝染し、身体はさらに強張る。
ホップが心配そうに見つめる。
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ミミ、無理しなくていいよ。
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……ううん。怖いけど……進むの。
ムアが目を細める。
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恐れを認めた上で進む奴は、弱くない。
三人と一羽は慎重に川沿いを歩いた。
やがて、上流で大きな異変を見つけた。
2本の巨木が川の流れを変えようとしていたのだ。
1本はすでに倒れ川の半分をせき止めている。
もう一本の巨木の根も激しく削られ、
川へ倒れかけている。
これが落ちれば、急流が森の巣穴を飲み込む。
ホップが叫ぶ。
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やばいよ……早く森に知らせないと!
ミミは震える手で、小鳥をそっと抱えた。
川の轟音で恐れがます。
しかし森のみんなに知らせなくては。
【3】森の避難と、ふく翁の言葉
森に戻り、ミミと小鳥は他の動物たちへ急いで知らせる。
だが声は弱く小さい。
誰も最初は信じてくれない。
そのとき、ふく翁が静かに羽を広げた。

ほっほ。
声が小さくても勇気ある行動じゃのう。
ミミや。

小さくても、恐れていても、
それを抱えたまま進む者には、皆が協力したくなるものよ。
その言葉で森は動いた。
避難が進み、間もなく巨木は轟音とともに川へ崩れ落ちた。
【4】ミミの気づき
夕暮れ、川辺に戻ったミミは、小鳥にそっと言う。
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怖かったよ。でも……
動いてよかった。
止まっていたら、きっと何も変わらなかったから。
小鳥は羽を震わせ、小さく頷いた。
ホップが笑う。

ミミが歩き出したから、ぼくたちも動けたんだよ!
ムアも静かに言う。
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そうだな。
ミミが動かなかったら、
きっと俺たちは気づいてすらいなかっただろうな。
ミミは胸の奥のざわつきが、静かに溶けていくのを感じていた。

※以下は東南アジアの寓話・口承民話の『川で泣いていた小鳥』の、著者による意訳(現代語訳)です。
原典のストーリー構造を保持したうえで、読みやすく再構成しています。
川で泣いていた小鳥
むかし、温かな森を流れる川のほとりに、
一羽の小さな小鳥がすんでいました。
小鳥はある朝、川の流れを見つめて震えていました。
昨日よりも、流れが深く、冷たく、速く感じられたのです。
森の動物たちは言いました。
「小鳥よ、川はいつも流れている。
そんなに怖がることはないだろう。」
けれど小鳥の胸のざわめきは、止まりませんでした。
小鳥は森の仲間に知らせようとしましたが、
誰もその不安を信じてはくれません。
その日の夕暮れ、
上流の大きな木が根こそぎ倒れ、
川は急に荒れはじめました。
濁流は森の巣穴に迫りましたが、
小鳥の言葉を少しでも気に留めていた動物たちは、
すでに高い場所へ移動していました。
それから森の仲間たちは学びました。
小さな不安は、時に大きな変化の兆しであること。
感じ取る心を軽んじてはならないこと。
小鳥は森の誰より早く、
“川の声”を聞いていたのです。

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